意志的な人が必ずしも能動的なわけではない。たとえば「運命」に対してきわめて受動的な観念を持つ人が、その観念の正しさを証明しようとして、ひたすら意志的になったりもする。
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すぐれた本を読むことは、現実という「夢」から目覚める一手段である。
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人間の心には独特の慣性力があって、自分を変えようと思ってもすぐに狭い自分、小さな自分へ戻ってしまう。ではなぜそんなことが起こるかというと、人間の自我はたえず無意識に自己評価をしているからである。より正確にいうと、無意識に自己評価することこそ自我の活動の本質であって、歩き方や話し方を意識して変えるのが困難なように、自己と世界への狭量な見方を、なかなか変えられないのである。